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埼玉県川口市の中医学専門はり灸治療院石上鍼灸院ブログ

中医学専門はり灸治療院

中医学は数千年前から臨床現場の経験を積み重ねて理論体系化されている医学です。

◆睡眠について@

2016年6月2日(木)

こんにちは、埼玉県川口市の中医学専門石上鍼灸院です。

はやいもので、もう6月になりましたね。
少し前までお正月だったような気がします・・・。

睡眠暖かくなり過ごしやすくなりましたが、皆さん睡眠の状態はどうでしょうか。
中医学の診断では、睡眠の状況を参考にすることもあります。
一概に不眠症と言っても、寝つきが悪かったり、睡眠が浅かったりと人によって違います。
この違いも証の区別の一助となります。
そこで、今日は睡眠についてお話ししていきますね。

ちょっと堅くなりますが、米国睡眠医学会の不眠症の一般的基準をそのまま載せます。

A、 入眠困難、睡眠維持困難、早朝覚醒、慢性的に回復感のない、質のよくない睡眠が続くと訴える。 子どもの場合は大抵保護者から報告され、就寝時のぐずりや1人で眠れないといった睡眠障害がある。

B、 眠る機会や環境が適切であるにもかかわらず、上述の睡眠障害が生じる。

C、夜間睡眠の障害に関連して、以下のような日中障害を少なくとも1つ報告する。
  1. 疲労または倦怠感
  2. 注意力、集中力、記憶力の低下
  3. 社会生活上あるいは職業生活上の支障、または学業低下
  4. 気分がすぐれなかったり、いらいらする(気分障害または焦燥感)
  5. 日中の眠気
  6. やる気、気力、自発性の減退
  7. 職場で、または運転中に、過失や事故を起こしやすい
  8. 睡眠の損失に相応した緊張、頭痛、または胃腸症状が認められる
  9. 睡眠について心配したり悩んだりする

特に睡眠時間は基準に含まれていませんが、一般的には6〜8時間が多いのではないでしょうか。
私が学生のころは睡眠時間は6時間と決めていました。
そのせいか、6時間を切ると起きるのが辛いですし、8時間寝続けることも出来ません。
今の睡眠時間は7時間前後ですが、若かりし頃の無理をしてた頃は6時間以内の睡眠を続けていた時もありました。
その頃を思い返すと、朝起きるのが非常に辛かったですね。
気合を入れて起き上がっていたのを思い出します。
今は時間をしっかりとっているので、目覚ましがなくても外が明るくなると自然と目が覚めるようになっています。
ただ、時間以上に睡眠については質が大事になります。
時間をしっかりとっていても、朝起きられなかったり、スッキリせず疲れが残るようだと、睡眠に異常がある可能性があります。

では、睡眠について詳しくみていきましょう。

◆寝つき
一般的には、10分以内だと寝つきが良く、30分以上だと悪いと判断されることが多いそうです。

・「興奮して眠れない」タイプ
中医学では肝気鬱結、肝火上炎に多いとされています。

肝の臓は気の昇降出入を調節する働きがあり、また精神面にも影響を与え、正常であれば気持ちは朗らかになります。
肝は五行では「木」に属しているので、木が枝を伸ばすようにのびのびしたいのですが、何かしらの(主に精神的なもの、ざっくりいうとストレス)抑圧を受けると、肝の気の巡りが悪くなってしまいます。
これが、肝気鬱結です。
症状としては、感情の抑うつ、怒りやすいか落ち込みやすい、よくため息をつく、胸脇や下腹部の左右の脹痛、月経痛、月経不順などがみられます。

さらにこの肝気鬱結が長く続いて化火すると、肝火上炎となります。
気や食べたものが長く停滞すると火が発生すると考えられています。
気が滞るというのは少し分かりずらいので、分かりやすい例としては、食べ過ぎたり、消化に時間のかかる脂っぽいものを食べると、胃に食べたものが長時間停滞します。
すると熱が発生して火は上に上がっていくので、逆流性食道炎や口内炎などの症状が出ます。
肝火上炎は、気の滞りによって火が生じ、体の上の部分に症状が強くあらわれます。
頭痛、めまい、潮騒のような耳鳴り、顔面紅潮、目の充血、口が苦い、のどの渇き、怒りやすい、胸肋が脹痛して灼熱感がある、出血しやすいなどがみられます。

中医学では、朝になると陽気が体の表面をめぐり諸器官を働かせ活動的になり、夜になるとその陽気が体の内側の陰に入ることで、眠ることが出来ると考えられています。
この陽気が何らかの原因で頭や目に残っていると眠れなくなってしまいます。

興奮して眠れないタイプは、肝気鬱結や肝火上炎により、熱(陽気)が体の内に帰れないことで寝つきが悪いタイプになります。

・「あれこれ心配したり、また眠れないかと心配して眠れない」タイプ
心脾両虚にみられます。

心脾両虚は、心血不足と脾気虚の症状がともにみられる病証です。
多くは思慮をめぐらせすぎて脾を損傷し、気血の生成が不足したり、慢性に出血して心血を消耗したりして、心脾相互に損傷が及ぶと心脾両虚の証となります。
脾の臓は思慮の精神活動と関係が深く、思い悩み過ぎると脾の働きを低下させてしまいます。
脾の一番の働きは、食べたものを消化吸収して気血を作ることなので、その働きが低下すると、食欲がなくなったり、軟便や下痢などの症状があらわれ、気血の生成が不足します。

心配性の方に多いのですが、そのような方に「心配しないように」と言っても難しいですよね。
私のどちらかというと脾気虚体質なので。
私が寝つきが悪いと感じるときは、音楽を流すようにしています。
ラジオだと言葉を追ってしまって頭が働いてしまうので、エンヤなどのヒーリングミュージックや最近はジャズを聴くといい感じでスッと寝つけます。
本を読んでいた時もあるのですが、これも時々頭が活発になってしまい眠れなくなることがあったのでやめました。
何度か読んだことのあるマンガだと眠くなります。
人それぞれ良い方法を見つけてもうのがいいのですが、音がなかったりすると脳で眠らなくちゃと考えてしまうので、脳の意識を違う方向に向けるのがいいと思います。

また、心脾両虚は血不足でもあるので、運動をし過ぎると血を消耗してしまい、眠れなくなることがあります。
血は精神活動の栄養源なので、血が充実していると情緒が安定します。
また、夜には陽気が体の内に入るのと同様、血が肝に戻ることでも眠くなります。
血不足だと肝に戻る血がないことと、情緒も安定しないので、より考えすぎてしまいます。
さらに、脳を活動かすことも血を栄養源にしているので、眠らなきゃと頭で考えすぎてさらに血を消耗してしまいます。
悪循環ですね。

心配して眠れないタイプは、考えすぎてしまう性格の上に、血不足が加わって寝つきが悪いタイプです。

かなり長くなってしまったので、何回かに分けてお話していきます。
血を増やすにはどうしたらいいかなども今後お話していきます。



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