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埼玉県川口市の中医学専門はり灸治療院石上鍼灸院ブログ

中医学専門はり灸治療院

中医学は数千年前から臨床現場の経験を積み重ねて理論体系化されている医学です

◆副腎と中医学五臓の腎(後編)

2019年6月1日(土)

こんにちは、埼玉県川口市の中医学専門石上鍼灸院です。

前回の『副腎と中医学五臓の腎@』の続きです。

「アドレナリンが腎陽の側面を示すなら、腎陰に相当するホルモンは何だろうか?」

「答えは明らかにコルチゾールである」

先に、コルチゾールについて説明します。
コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンのひとつです。
ストレスを受けた時に分泌が増えることから『ストレスホルモン』とも呼ばれています。
コルチゾールの主な働きは、肝臓での糖の新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などです。
例えば、その炎症を抑える働きから、ステロイド系抗炎症薬として治療にも広く使われています。
また、一般に、コルチゾールの分泌は朝が最も高く、夜には低くなり、生体の一日の活動リズムを整えると言われています。
過剰なストレスなどでこの活動のリズムが壊れて、コルチゾールの分泌が慢性的に高くなると、うつ病、不眠症などの精神疾患、生活習慣病などのストレス関連疾患が疑われるといえます。


「興味深いことに、コルチゾールとアドレナリンは多くの場合、同じ病態で用いられる。大きな違いとして、アドレナリンは急速に問題を修正するために、コルチゾールはよりゆっくりと修正するために用いられる。問題となるのは再び、アナフィラキシーである。」

「アドレナリンは非常に素晴らしい治癒効果を持つが、治療はそこで止まるわけではない。アドレナリンの半減期は短く、数時間ほどである。効き目が切れ始めるにつれて、アナフィラキシーは戻ってくる。アドレナリンによりオフにされた肥満細胞は、アドレナリンが分解され消滅するにつれ、再び目覚め始める。かゆみと赤みが戻ってくる。アナフィラキシーのリバウンドである。このため、コルチゾールも投与される。」

「アドレナリンは急速に数秒で作用するが、数時間以内に徐々になくなっていく。コルチゾールは作用するのに数時間かかるが、何日も作用し続ける。」

「アドレナリンは陽のすべての側面(外側、長続きしない、速い)を持つ。コルチゾールは陰の側面(内側、継続、遅い)である。」

「コルチゾールはかつて、何のおとがめもなく投与されていた。(中略)副作用が現れるのに数年かかる(陰の物質に一致する)。」

「コルチゾールで最もよくある副作用は次のものがある。
 ・体液貯留
 ・骨の弱体化(骨粗鬆症)
 ・筋肉が細る
 ・うつと精神医学的な症状
 ・高血糖(糖尿病)        」


少し難しい言葉が出てきたりもしましたが、以上から中医学でいう『腎』の働きが、現代医学の副腎の働きで説明できる点が多々あると感じられたのではないでしょうか。

当院に来られるうつ病の方や、精神的に落ち込みを感じている方などには、ほぼ腎の弱さがあります。
持続的なストレスにより、アドレナリンによる自律神経のアンバランス、コルチゾールによるホルモンのアンバランスが、精神的な不調を起こしていると考えられます。
このような状態は、中医学では腎虚(腎陰虚)という証です。

中医学は経験医学なので、目にみえなかったり、科学的なエビデンスがないことを批判されることもありますが、患者さんが鍼灸治療を受けて、調子がいいと感じるようであれば、無駄なことではないと私は思っています。
腎経のツボに針の刺激をすることで、副腎に作用して、コルチゾールやアドレナリンの分泌を調整する可能性があると考えれば、うつ病などのなかなか治りづらい症状にも貢献できるのではないでしょうか。



中医学専門はり灸治療院
石上鍼灸院

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