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埼玉県川口市の中医学専門はり灸治療院石上鍼灸院ブログ

中医学専門はり灸治療院

中医学は数千年前から臨床現場の経験を積み重ねて理論体系化されている医学です

◆中医学五臓の腎と血圧

2019年6月11日(火)

こんにちは、埼玉県川口市の中医学専門石上鍼灸院です。

今回も、中医学の理論を現代医学の内容で説明してくれる貴重な参考書である「閃く経絡」(医道の日本社、著ダニエル・キーオン)からの抜粋です。


まず、内容に入る前に、中医学で「心腎不交」という証についてお話します。
陰虚火旺ともいい、五行では心は火、腎は水に属しますが、その火と水のバランスが崩れてしまった証です。
過労や精神的ストレス、慢性疾患、過度の性行為が原因となります。
過労、慢性病、過度な性行為により腎陰(腎精)を消耗してしまい、心火を抑制できずに動悸などの心火の亢進症状を生じてしまいます。
もしくは、ストレスにより気が滞り、気が滞ると徐々に火が生じてしまい、心火が亢進して、腎の陰液を消耗し、耳鳴りやめまいなどの腎陰虚の症状を生じてしまいます。

心火が亢進したときの症状は、動悸・不眠症・胸中の煩悶感(落ち着かずもだえる感じ)・心臓部の痛み・情緒不安定など。
腎陰が不足したときの症状は、耳鳴り・めまい・下肢のだるさなど。
腎精が不足したときの症状は、夢精・遺精・帯下など
陰虚により内熱が生じたときの症状は、のどの乾燥・手足胸の熱感・口内炎・咳など。

これだけをみると、火と水をこじつけているように感じる人もいるのではないでしょうか。
では、現代医学の内容と照らし合わせてみましょう。


「腎臓から生成される別のホルモンに「レニン」がある。レニンは、存在する薬理学的製剤で最も成功した種類の1つ、ACE阻害薬を生み出したホルモンである。」

「ACEはアンジオテンシン変換酵素を表す。これは腎臓と心臓の間で重要な連絡を果たし、心臓にさらに働くように伝える。このつながりには、正当な理由がある。腎臓が十分な血液を得ていないと心臓に伝えることを可能にしているのだ。腎臓で血圧が低下すると、ネフロンのわずかな領域にある細胞はレニンを産生することで応答する。」

「レニンは、アンジオテンシン変換酵素を活性化する場所となる肺へ血液を巡って移動する。これにより、血管(angio-)を緊張させる(tense)ホルモン、アンジオテンシンが生成され、心臓のポンプ機能をより強くする。さらに、アルドステロンと呼ばれる別の副腎ホルモンを介して腎臓に水分を保持させる。その結果、血圧が増加して腎臓は再び楽になると、レニンを産生するのをやめる。」

「このつながりが異常になると、腎臓は心臓を鞭で打ち始める。心臓はさらに懸命に働くものの、腎臓はまだ楽にならない。血圧は上昇し、心臓はより硬く、大きくなり、追加のストレスに打ち勝とうとする。最終的に、心臓は疲弊して、壊れてしまい、心不全を発症する。」

「中国人は心と腎の間にあるこのつながりに気づいていた。実際、中国人はこれを生命で最重要なものとした。腎は精を貯蔵し、心は神(または霊性)を宿す。腎水は心火を制御し、心火は腎陰に活力を与える。」

「中国人は、腎臓がレニンと呼ばれるホルモンを産生することを知らなかったし、レニンが肺内部に作用して、別のホルモンを産生して、心臓にストレスをかけることも知らなかった。中国人はこれが副腎を介して腎臓にフィードバックされ、より多くの水分を保持するように伝えることも知らなかった。」

「大動脈が間に入ったこのつながり(心と腎)は特別である。血液を拍出する力は、他の臓器にはみられない形で、腎臓を刺激する。これらの2つの臓器の間で直接影響し合うホルモンは少なくとも7つある。それらはアルファベット順に、アドレナリン、アルドステロン、アンジオテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド、ドーパミン、バソプレシンである。鍼灸の理論は、動脈を介した腎と心の特別な関係こそが少陰経を形成することを教えている。」

「中国人が腎と心を身体の主軸として説明するとき、それは現代医学とも一致するのだ。」


長くなってしまいましたが、何となくでも腎と心の大事な関係を分かっていただけたでしょうか。
動悸がするとか、胸の辺りがギュッとなるというのは、身体の健康な方でも出る症状です。
病院で診てもらっても、問題ないですねと言われた方も多いのでは。
そんな時は、心臓だけをみるのではなく、腎のことも含めて体全体を診てみると原因が分かるかもしれません。


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