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埼玉県川口市の中医学専門はり灸治療院石上鍼灸院ブログ

中医学専門はり灸治療院

中医学は数千年前から臨床現場の経験を積み重ねて理論体系化されている医学です

◆ストレスからくる疾患C 中医学で考える病的状態

2020年10月16日(金)

こんにちは、埼玉県川口市の中医学専門の石上鍼灸院です。

ストレスからくる疾患の第4弾です。
『中医臨床』を参考にさせて頂いています。


中医学で、ストレスによる疾患を考えるうえで重要な臓腑は、心、肝・胆、脾です。


■心の異常によるもの

心の異常では、意識水準の低下、痴呆、妄想、睡眠・覚醒の異常などがみられます。
また人格障害などの性格の極端な偏位も心の問題です。
中医弁証では、心気虚、心血虚、心陽虚、心陰虚、心火上炎、痰迷心竅などがあります。


■肝・胆の異常によるもの

肝・胆の異常では、抑うつ気分、不安・焦燥、食欲低下、睡眠障害などがみられ、西洋医学的に「うつ状態」とされるものに相当します。
うつ状態は、春の季節、月曜日そして午前中に特に症状が強くなります。
これは、肝・胆の木性という五行の性質によります。
木は上や外側に伸びていく性質(条達を好む)があり、盛んになる季節は春、時刻は早朝です。
つまり、春や早朝に「さあ、今日は(今年は)○○をやろう!」というように気をめぐらせる(胆気の昇発作用)ことができればよいのですが、それを阻害するような環境であると、胆も決断づけることができず、胆気が昇発できなくなってしまいます。
ちょうど伸びようとする木に覆いをかぶせるようなものです。
これを肝鬱(胆鬱)と呼びます。

肝鬱(胆鬱)では、抑うつ気分だけでなく、さまざまな身体症状を伴います。
胸脇苦満はその1つです。
これは、脾で生成された水穀の気が脾の昇清作用よ胆気の昇発作用により膈を貫き胸へ向かうべきところが、胆気の作用が弱いために膈の下で停滞してしまうことが一因となります。

またうつ状態の患者さんはたいてい浅い胸式呼吸になっています。
これは胆の昇発力と膈の動きがともに低下しているからです。
そして、肩こりや変な筋緊張がみられることも多いです。
これは胆の気の分配決定能力の低下により、屈筋と伸筋が同時に緊張するように、不適切な筋緊張を生じているからです。
さらに食欲不振や胃痛・腹痛、下痢などもみられます。
これは肝気横逆(木克土)といわれます。


■脾の異常によるもの

脾の異常では、筋肉を栄養することができない、つまり、倦怠感が主な症状となります。
ただし、肝鬱(胆鬱)でも患者さんは倦怠感を訴えます。
両者の鑑別は、肝鬱(胆鬱)であれば少し休憩をして息抜きや気分転換をはかれば、気は再び疏通するために倦怠感は回復します。
しかし、脾虚であればよほど長く休まない限り楽にならないという点です。


上記をきわめて簡単にいえば、@心は性格傾向や意識水準、A肝・胆は問題検討能力、B脾は行動実行能力を表すといえます。
ストレス関連疾患をみる場合は病変の主座がこれら心、肝・胆、脾のいずれかにあるかの判別が重要となります。
たとえうつ状態を呈している患者さんでも。病変の主座が肝・胆の異常でないこともあります。
例えば、「食べ物に毒を入れられている」との妄想から抑うつ気分を生じているような患者さんの場合、病名としては統合失調症であり、心(神)の異常が主で、肝・胆の異常は副となります。
心理テストで抑うつスコアが高い=うつ状態=うつ病→抗うつ剤もしくは疏肝理気剤の投与ではありません。
うつ状態はあくまで状態名で、病名でないこと注意が必要です。


治療では、@神は安神、A肝・胆は疏肝理気、B脾は補脾が中心となります。



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石上鍼灸院

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