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埼玉県川口市の中医学専門はり灸治療院石上鍼灸院ブログ

中医学専門はり灸治療院

中医学は数千年前から臨床現場の経験を積み重ねて理論体系化されている医学です

◆脾と湿 @

2021年9月8日(水)

こんにちは、埼玉県川口市の中医学専門針灸治療院の石上鍼灸院です。

今回も中医学の内容を、現代医学的観点でみていきます。
ダニエル・キーオン著「閃く経絡」を参考にさせて頂いています。


中医学でいう「湿」とは水分が多すぎる体の状態です。
中医学も西洋医学の両者とも、ポンプ機能不全(心臓)、または水分の排出不全(腎臓)により、水分過剰(=湿)が生じると考えます。
ただ、中医学では過敏性腸症候群(IBS)など多くの疾患で現れる別の種類の湿があります。

この湿は脾(現代医学では膵臓の働き)の不足で引き起こされ、心臓や腎臓の機能不全とは性質が異なります。
脾の湿は液体を動かせないのではなく、代謝障害の湿となります。


脾の湿は心臓と腎臓の過負荷とは異なる病像を示します。
心臓と腎臓の機能不全では、湿は下に落ちてきて、足関節で腫脹を生じさせます。
脾の湿は正中線の周りで液体を蓄積させます。
例を挙げれば、腹部膨満とビール腹です。
肌の色もずいぶん違うことが多いです。
心臓と腎臓の機能不全は多くの場合、灰色、暗色、または青色になります。
脾の湿の患者さんは黄色にみえます。


脾虚(膵臓の機能低下)による湿の場合、腎臓や心臓の機能不全のように液体の除去に失敗する結果では生じず、浸透の結果として生じます。
言い換えれば、湿は最初に毒素の代謝産物として現れ、それらの毒素の代謝産物が水分を引っ張り込みます。

水分が溶けた物質に伴うこのプロセスは浸透と呼ばれます。
これは全ての生物の正常な機能において重要です。
我々の細胞は、細胞内部、または細胞外部の液体の量を調整するために浸透を用いています。


代謝産物があってはならない所に現れる(毒素)と、バランス(ホメオスタシス)をひっくり返します。
毒素は水を引きつけます。
体は効率的に毒素を処理できないため、水と毒素は長く居座ることになります。
これを中医学では「湿」と呼び、これは消化管で最もよくみられます。
なぜなら、腸は食物を腐熟する性質をもっているので、毒素を熟成させやすいからです。


湿は物質を停滞させる傾向があり、体のシステムから物質を掃除する能力を弱めます。
この停滞の結果として、代謝が減速し、毒素が形成されやすくなります。
現代医学的には、この「毒素」という用語はあいまいで、不適切に感じられます。
毒素とは、単純にいえば、正常値より高い濃度で存在する物質、または細胞機能に害となる物質のことです。

毒素の一例は、膵臓が十分なインスリンを作れなくなるときに引き起こされる過剰な糖です。
正常な濃度の糖はあらゆる細胞機能に不可欠ですが、糖尿病では、糖の濃度が上がり、有毒になります。
過剰な糖と水分は組み合わさって、粘っこく、厄介なものになります。
こうなると、湿はより病的で汚らわしいものである中医学で「痰」と呼ばれるものに変化します。


続きは第2弾で



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