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埼玉県川口市の中医学(中国伝統医学)に基づく施術を行っている鍼灸院です。

〒332-0023 埼玉県川口市飯塚3-7-28TEL:048-446-9860

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鍼灸治療の生理学的治効機序

中医学は経験医学なので、神経伝達物質がどうとか、オピオイド受容体がどうとかを理解して伝えてられてきたものではありませんが、現代ではどうして鍼灸治療が様々な症状に効果があるのかを説明できることも多くなってきました。
ここでは少し難しくなりますが、生理学的観点から鍼灸治療がなぜ効果があるかを説明していきます。

参考文献:医道の日本社「いちばんやさしい痛みの治療がわかる本」著伊藤和憲

鍼灸治療により痛みが鎮まる理由

【疼痛局所への刺鍼】

◆オピオイド受容体を介した鎮痛


 炎症があるところには痛みを抑制する物質であるオピオイドを含有した免疫細胞が数多く存在しています。鍼灸刺激によりそれらの免疫細胞にオピオイドを放出させ、末梢の痛覚受容器に存在するオピオイド受容体に作用させることで鎮痛が起こります。
 オピオイド

◆アデノシンA1受容体を介した鎮痛

 鍼灸刺激で微小の組織損傷が起こると、細胞からアデノシン3リン酸(ATP)が漏出します。ATPは分解されるとアデノシンになり、アデノシンが末梢の痛覚受容器に存在するアデノシンA1受容器に作用して鎮痛が起こります。
 アデノシン


【脊髄神経支配エリアへの刺鍼】

◆ゲートコントロール説


 障害のある脊髄神経と同じ支配エリア(デルマトーム・ミオトーム・スケルトーム)に鍼灸刺激を行うことで、障害のある脊髄神経の痛みを抑えます。
 ゲートコントロール


【四肢末端への刺鍼】

◆下行性疼痛抑制系


 鍼灸刺激により、脳の視床下部、中脳中心灰白や延髄大縫線核から内因性のオピオイド物質(βエンドルフィン・エンケファリン・ダイノルフィン)を放出させます。βエンドルフィンは受容体が全身に存在するのであらゆる痛みに対して対応が可能です。エンケファリンは情動に伴う痛みに、ダイノルフィンは気分の変化やストレス、天候などで悪化する交感神経依存性疼痛のような交感神経性の痛み、さらにはかゆみなどに効果的です。
 また、中脳・橋を介する鎮痛系は脊髄でノルアドレナリンを放出させ、中脳や延髄を介する鎮痛系は脊髄でセロトニンを放出させます。これらの神経伝達物質が増えることで、痛みに関連した気分の落ち込みや不安、恐怖などの症状が改善するものと考えられています。
 下行性疼痛抑制

鎮痛以外の鍼灸治療の効果


◆筋紡錘、腱紡錘を介した筋緊張の緩和


 筋緊張が増加すると、こりや痛みを生じることが知られています。一般的に筋緊張により血流が低下すると発痛物質が局所に留まるため、痛みを誘発します。そのため、筋肉の中でも筋紡錘や腱紡錘の分布が多いモーターポイントや起始部・停止部を刺激すると、筋紡錘を介したTa抑制や腱紡錘を介したTb抑制により筋緊張が低下し、痛みも改善します。
 筋腱紡錘


◆血流改善

 鍼灸刺激により、C線維を介した軸索反射が生じ、フレアーと呼ばれる局所的な血流改善が起こります。
 軸索反射

◆自律神経の調節

 自律神経に影響の深い筋肉は抗重力筋(僧帽筋、脊柱起立筋、下腿三頭筋など)であり、交感神経が亢進しているときはこれらの筋肉は緊張しています。そのため、抗重力筋を緩めることで、交感神経が抑制され、副交感神経優位となるため、全身の血流が改善し、痛みの軽減にもつながります。

◆角質細胞を介した免疫・内分泌調整

 皮膚にある角質細胞(ケラチノサイト)が刺激されると、一酸化窒素(NO)が放出され、脳の視床下部を刺激してβエンドルフィンを放出させるとともに、脾臓を刺激してナチュラルキラー細胞(NK)を活性化することが知られています。そのため、皮膚への触刺激や擦過刺激は、鎮痛を起こすとともに、免疫細胞を活性化させ、免疫力を向上させます。
 角質細胞

◆神経伝達物質を介した作用

 特に四肢末端への鍼灸刺激により、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質を増加させます。セロトニンはうつなどの気分や鎮痛を、ノルアドレナリンは情動と、ドーパミンは運動や情動と関係があるので、これらの神経伝達物質が増えれば様々な症状が改善すると考えられています。


 上記のように鍼灸治療には多くの治効機序があり、様々な症状に効果があります。痛みに対する治療では、痛い部分への鍼灸刺激によりオピオイド受容体を介して痛みを緩和させ、それだけでなく四肢末端への鍼灸刺激により、内因性オピオイド物質を放出させたり神経伝達物質を放出させることで、さらに痛みを和らげることができます。中医学では四肢末端には重要な経穴(ツボ)が多くあり、昔から治療上非常に重視されてきました。昔の鍼灸治療家は四肢末端に鍼灸刺激を行うことで神経伝達物質が増加するなんてことは知らなかったと思いますが、経験的に痛み、うつなどの精神的な症状、自律神経失調症のような不定愁訴などが改善されることが分かっていたんですね。
 当院の治療では四肢末端の要穴に必ず治療を行います。当院のような鍼灸治療専門の治療院に行ってみようと思われる方の多くは、病院の治療や薬で良くならず、何とか良くなりたいという思いから来院される方です。なかなか症状が良くならない方には、やはり脳レベルでの治療が必要になり、そのため四肢末端の経穴を取穴します。関係ないようなところに治療を行いますが、このような理由がありますので、不思議に思わず治療を受けてくださいね。

埼玉県川口市の中医学専門針灸治療院
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