舌診とは?
舌診とは、舌診・舌苔・舌下静脈を観察することによって、疾病の性質・病位の深さ・病気の進退・正気の盛衰を判断する診断方法です
中医学では、人体とは多数の経絡によってつながる全体的なものと考えています
体内の臓腑経絡・気血津液・邪正闘争などの様々な状況は、経絡を通じて必ず体表に現れます
そのため昔から、舌は「内臓の鏡」と称されています
正常に近い舌
まず正常に近い舌を見てみましょう
【淡紅舌・薄白苔】
舌質の色はピンク色で、舌体はほどよい大きさです
舌苔は薄く、白色で、均等に覆われていて、適度に潤っています
苔は拭いても取れません
これは臓腑機能・気血津液が正常で邪気がないことを示しています
舌色
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淡白舌
淡白舌は血色が少ない舌
淡いものや、皮をむいた鶏肉のような血色がないものなどがみられます
このような舌色は、気血が虚していたり、温める力が弱っている(陽虚)とみられます
慢性疲労症候群、貧血、めまい、むくみ、栄養失調、慢性疾患、甲状腺機能低下症などによくみられます
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紅舌
淡紅舌よりも舌色が赤い舌
このような舌色は、熱を示しています
熱の邪気が侵入してきていたり、熱を冷ます働きが弱っていたり(陰虚)するとみられます
急性発熱性疾患、伝染性疾患、化膿性疾患および慢性炎症、交感神経の興奮、甲状腺機能亢進症などによくみられます
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紫舌
舌色は紫色を帯びていて、暗いので「暗舌」とも呼びます
このような舌色は、気血の流れが悪くて凝滞しているときにみられます
熱によって血液が濃縮する、冷えによって血脈が収縮する、気がめぐらないなどが原因で起こります
慢性疼痛、不整脈、心脳疾患、肺性高血圧、慢性肝疾患、婦人科疾患、運動神経疾患、しもやけ、微小循環障害などによくみられます
舌形
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老舌
舌のきめが粗く、硬く引き締まったような感じがするものをいいます
このような舌は、邪気が盛んですが、正気は弱っていないことを示しています
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嫩舌(どんぜつ)
舌のきめが細かく、柔らかい感じがするものをいいます
このような舌は、正気が弱っていたり、臓腑機能の低下を示しています
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歯痕舌(しこんぜつ)
舌の両側にギザギザした歯の痕がみられるものをいいます
胖大舌(正常より大きく腫れぼったい舌)とともに現れます
このような舌は、陽虚(温める力が弱い)によって、水湿が停滞していたり、脾気の機能が弱っていて、気や血が不足することでみられます
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痩薄舌(そうはくぜつ)
舌体が細くて小さい、または薄いものをいいます
気血や陰液が不足することでみられます
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舌下脈絡
舌裏にみえる2本の舌下静脈を指します
健康な舌下静脈は、長さが舌尖までの3分の2以下、太さは2.5〜2.7mm以下です
異常な舌下静脈は正常の長さや太さを超え、青紫色で怒張・蛇行しています
静脈瘤のような結節がみられたりもします
血の巡りが悪いとみられます
舌苔の色
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白苔
白苔は邪気が体表に侵入したばかりのもの(かぜ様症状)、寒邪や湿邪が体の中に侵入したもの、食べ物が消化吸収できずに留まっているときにみられます
主に、病気やかぜの初期、寒冷性疾患、冷え性、胃腸障害などによくみられます
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黄苔
黄苔は熱を主ります
邪気が表から裏に入り、病証が寒から熱に変化したことを示しています
黄色ければ黄色いほど、熱が重くなります
急慢性発熱性疾患、化膿性疾患、伝染性疾患、胃腸炎、胆のう炎、肝炎などの炎症によくみられます
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灰苔・黒苔
裏証の重症にみられます
灰苔は黒苔よりも症状が軽く、黒苔は灰苔よりも症状が重いことを示しています
基本的には、熱が非常に強いことを示しますが、陽虚寒盛によって水湿痰飲が長く停留したものでもみられます
高熱、脱水、化膿性疾患、発熱性疾患、慢性炎症の重篤なものなどによくみられます
舌苔の状態
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滑苔
苔の上に水分が多いもの
陽虚(体を温める力が弱い)による冷えにより、津液(体の水分)を全体に運ぶことができず、水飲が停滞してしまっているときにみられます
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燥苔
苔が乾燥しているもの
熱邪や燥邪が盛んで津液が少なくなったり、陰虚により苔が潤わないことでみられます
陽虚によって、津液を舌に運べないことでもみられます
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膩苔
舌面にべったりと張り付き、細かく緻密で、こそいでも取れないもの
湿邪が盛んであったり、食べ物が胃腸に停滞して消化できなくなっているときなどにみられます
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剥苔
苔が、完全あるいは一部が?がれているもの
胃気・胃陰の損傷によりみられます